桜風 〜春の雪〜
問いかけても……

何もかえってはこない…


「春雪と…なにか話せた?」



気がつくと

すぐ側には……

一馬が立っていた…。



「なんかさ…二人でここに立つと、嫌なこと思い出さない?」



「あぁ!病気のこと話してくれて…一馬が大泣きした日?」


そう…ここに残る……

一番辛かった日の

思い出……。



「あれは…忘れろって!」


一馬は笑いながらも……

横であたしの様子を確かめる


「大丈夫だって!もう…泣かないし!」


笑ってみせると

一馬は安心したように

近くにあるベンチに腰掛けた。




あの日と変わらず

ずっと……思い出の木を見つめてきたベンチ



このベンチの座り心地もまた……


あたしの思い出の一部。

春雪がいない思い出も、あたしの中には愛する人を思った記憶として残っていて


春雪と切り離すことなんて出来ないんだ…。



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