桜風 〜春の雪〜
そこに……
春雪はいるはずなのに……
何も答えはかえってこない……
その代わりに
一馬が……口を開いた…
「婆ちゃんが死んだ日…森定とここで会ったろ…。その後…あいつは…ここに俺を呼び出したんだ…。」
一馬の口から話される、あたしの知らない……
思い出の裏側……
「森定は…俺が花梨に惚れてるの知ってたからな。アイツは…俺に花梨へのメッセージと…夢を託したんだ……。」
「メッセージ?……春雪の?」
「そう……いつか…花梨が迷ったときに…渡してくれってね…。」
一馬は…優しくほほえみながら…
桜の木の根元を指差した……
何十年もの間、この大きな木を支え続けてきた
この場所の大地……
土のひと粒ひと粒に……
あたしと春雪……
そして、お婆ちゃんと愛した人の足跡が……
閉じこめられているような気がした……。
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