桜風 〜春の雪〜

大好きな桜の木……


あたしの背よりも少し高いところに

微かに残された…


思い出の跡……。


よく見ると…

肇・加代


って彫ってある……。



昔交わした、2人の約束のしるし。


一馬はその位置から真っ直ぐ下に降りた土の上に…

目を走らせると……



近くにあった園芸用のシャベルで辺りを掘り始めた………。



「一馬……?」


あたしの声が……

神聖な空気に溶けて消えた……


風の音さえも聞こえない、誰も犯すことの出来ない空気…。


その中で、思い出を掘り起こす音を聞きながら…

あたしは、感じていた…。


あたし自身のどうしようもない弱さと、愛する意味を……



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