桜風 〜春の雪〜
一馬は……

泣き崩れるあたしを…

何も言わずに、見守ってくれた……。



あたしの涙が……

ようやく治まりかけた頃には…


すっかり日は暮れていて、顔を出し始めた星達が遠い昔から来た眩い光を届けている…。


「花梨……。」



一馬はあたしの体を起こしながら……


手の中に……

何か……

小さな固まりを握らせた……。



「一馬?…なに…??」


不用意に手を開けようとしたあたしを


一馬は無言で制した…



あたしの手を覆うように…

一馬は上に手をのせて包み込む…


「…森定の…夢だよ。」



そう…言って……

一馬はリボンをほどくように、自分の手をどけた………




…………


「これって……」


手のひらに残された……

小さな固まり……


銀のリングに…キラキラと散りばめられた桜色の宝石…


暗い中でも…

月明かりにキラキラと照らされて…


美しく輝く…

エンゲージリング…



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