桜風 〜春の雪〜
「これが、春雪の夢?」
おさまりかけていた涙は、再び堰を切ったように流れ出る…。
一生のうちに流す涙の量が決まっていたのなら、枯れてしまうほど泣いたはずなのに…
次々とあふれ出す涙が、温かいものに変わってゆく…。
「そう…。森定の夢は…宝石屋を継いで、自分のデザインしたエンゲージリングを作ること。」
一馬は、いつまでも光を失うことのない強い瞳で空を見上げる…。
「エンゲージリング…?」
春雪の家が、宝石屋さんだってことは知っていたけど……
こんなステキな夢があったなんて…
知らなかったよ……。
「森定が…入院中…花梨を思ってデザインしたんだ。自分のデザインしたリングで幸せになる花嫁さん。それが…アイツの昔からの夢だったんだよ。」
あたしは…戸惑いながら
一馬を見上げた……
「一馬…これって…?」
「花梨…結婚してください。幸せな花嫁に…なって?」
「一馬…………あたしで…いいの?」
「二人で幸せになって…あいつの夢を叶えよう?」
「一馬…あたし……。」
「花梨…愛してるよ。」
一馬の温かい愛の言葉が、無数の星になって…
あたしに降り注ぐ…。
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