桜風 〜春の雪〜
「なに、なに〜!?森定と秘密の合図?」


後ろに座ってるアユミに気づかれて

あたしはとっさに手を引っ込めて、後ろへと視線を移す


「違うって!
ただ目が合っちゃったからさぁー」


必死に弁解するあたしをアユミは、ニヤニヤとしながら見つめていた…。


「あのさ…前の大事な話なんだけどさ…。」


「エッ…!!」


この何日か忘れかけてた……

出来れば避けて通りたい話題を

急に振られたあたしは、


一気に凍り付いたように動かなくなった。


大丈夫…

大丈夫…。


心の中で何度も繰り返す…


あの日、決心した

あたしの強い気持ち。


それを探してあたしは春雪の方に

目だけチラッと移した。


そしてあたしは、覚悟を決めて


体ごとアユミの方を向いた。



彼の話でありませんように…。


そう心で願いながら、そうであって欲しいとも、少しだけ思っていた…。

それが、苦しみの幕開けだったとしても、乗り越えることであたしはやっと救われるのかもしれない……


春雪の穏やかな顔を見ていると、なんとなくそう思えた……。




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