桜風 〜春の雪〜
………


少しの沈黙の後

アユミはあたしの顔を気遣わしげに覗き見ながら―――


「森定って……
花梨の事好きみたいだよね。」



って突然話を始めた。


「えぇー!!」



予想もしなかったアユミの言葉に

あたしは、周りのことなんか忘れて

大きな声を上げた―――


一斉にあたしへ集まる
周りの視線。

その向こうに……

春雪の爆笑する声が聞こえた―――


あたしに集まっていた視線の半分くらいが

今度は春雪を目掛けて飛んで行く……


「んーっ!!ゴホンッ!!」


学年主任の先生の渾身の咳払いで

生徒達は静寂を取り戻し……

教頭先生の

長々とした退屈な話が再開された。



あたしは先生の視線に、申し訳なさそうに頭を小さく下げて前を向いたけれど…



少したって

その痛い視線から解放されると


勢い良くアユミの方に振り返った。



微かに聞こえる春雪の話し声が、心臓を優しく刺激する…。


正直なあたしの耳は、空気を伝わる微かな振動にさえ、敏感に反応して


あたしは、朦朧とする思考の中で、必死に出口を探していた…。




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