桜風 〜春の雪〜
"もう…

アユミ!

いきなりあんなこと言うなんて

反則だよ!"


あたしがやっと聞こえる位の

小さな声で囁くと…


アユミは下を向いて

まだ笑いを堪えているようだった。


"ごめん、ごめん…。

あんなに驚くなんて
思わなかったんだもん!"



アユミはあたしと同じくらい

小さな声で言ったけど……

言葉の節々で

まだ笑いを堪えるのに必死だった。


あたしはそんなことは気にせずに

言葉を続ける――。



"そんなこと無いって!
最近ちょっとだけ仲良くなっただけで!

それまでは話したことなんて…

なかったし!!"


何か話していないと、自分を見失いそうで怖かった…。

それが、どんな意味を持つのかなんてわからないけど、あたしは笑って言葉を濁すことしかできなかったんだ。


"あの日…
花梨が倒れる前から……あたしはそうなのかな…って思ってたよ…。
だから、気を利かせて二人っきりにしてあげた訳さ!"




アユミは小さく舌を出してウィンクする


"だーかーらー


違うってば!"



火照った頬を撫でるヒンヤリとした風が、あたしの頬が熱くなってるってことを思い知らせるように吹きつけた……。


それでも、一向に止まない激しい鼓動と、鼻に抜けるツンとした熱い息……


あたし…どうしちゃったんだろう…?


熱に魘された子供みたいに、あたしは何度も頭を横に振りながら、乱れた心をリセットした……。



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