桜風 〜春の雪〜
あたしの好きな人は

切れ長の瞳の綺麗な女性が好き。


彼女にあってあたしに無いものは…


綺麗な大人の雰囲気だけだ。


そう…思ってた。


でも…本当は…

気づいていたのかもね……


あたしの…

汚くて、可愛くない心の中側…。



彼は同じ高校の同級生だ

ただ同級生と言っても、
うちの学校は入試の段階で普通科と特進に分かれていて

あたしは勿論…普通科

―――彼は特進


普通科と特進科は同じ学年といえども
建物自体が離れ離れになっていて……

あたし達は容易に特進科と関わり合うことは出来ない。



普通ならば……

彼と関わる機会もないんだ……。



つい、1ヶ月前までとろけてしまいそうな
恋の熱に魘されていたあたしは


まだ

現実に戻ることが出来ずに、

始業式をサボって一人

体育館脇のひっそりとした裏庭で

始業式の様子をうかがっていた。



ここは……

唯一あたしが素直になれる場所なんだ。


ある人が教えてくれた

宝物の詰まった


大切な桜の木のある場所。


見上げると、満開の桜が、淡く儚い表情であたしを見つめていた……





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