桜風 〜春の雪〜
気がつくと、あたしは

ごく自然と言葉を発していた……


確かに…

あの時…

春雪に手を差し出されたとき

ドキンってした…

あったかい気持ちに包まれて、とても安心したんだ。


笑顔を見て

嬉しくなったし

花梨って呼ばれて

思わず顔がほころんだ。


でもね…



あたしの知ってる恋は……
こんなんじゃない……

もっと、
もっと―――――

ずっとドキドキが止まらなくて

苦しくて

時には

理性を失ってしまうくらい――――


激しく求めてしまう……。




そう――――

あの日みたいに――



脳裏に焼き付いた、彼の嘲るような笑みが、あたしの中に封印された

あの日の記憶を呼び覚ました……。





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