桜風 〜春の雪〜
長かった冬もやっと遠ざかって…

暑いくらいの日差しに、時折ひんやりと心地良い風が吹いた日……


あたしは、3学期に提出し遅れたレポートを持って

1人学校へつづくバスに乗った。


カタン

バスの自動扉が開いて…架空の人並みに吸い込まれるように、あたしは…バスに乗った。


いつもは、うちの高校の生徒で一杯のこのバスも…


春休みに入ってしまうと
閑散としていて

なんか、寂しい。


3段くらいの乗り込み口のステップを

不思議な感覚にとらわれながら

ゆっくりのぼると―――

「花梨ちゃん?」

って……

…聞き覚えのある声に呼び止められた。


ドキンドキン…


確実に速くなっていく鼓動を感じながら

あたしは、少しの期待と……ときめきを感じながら、

その声の主を振り返った…。


彼は

あたしの好きな人

そして、親友の彼氏。



「蓮くん?あ…久しぶり…」

必死に平常心を装ったあたしに

彼はいつもと変わらない笑みを浮かべて、

「こっちおいでよ!」

って爽やかにあたしを隣の席へと誘った。



ドキン…ドキン…

更に速度を増すあたしの心臓は

もう限界だ…って

SOSを発していたけれど


あたしは、甘い蜜に誘われる

蝶のように

導かれて……

彼の隣に座った……。





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