桜風 〜春の雪〜

―○○高校前―……


短いようで……長かったバスの時間


あたしは…苦手なジェットコースターに乗ったみたいに

目を回して、疲れ果てていた。

疲れた…

緊張した…

でも―――

楽しかった

そして―――

苦しかった。




「じゃあ、あたし職員室急がなきゃだから!!」

あたしは勢いよくバスのステップを降りて

後ろを振り返る。

逃げ出したかった蓮くんとの独特の空気…。

そのはずなのに、もう少しだけって思ってしまうあたしもいた。


「あぁ〜。そっか。課題か何か?」

「う、うん。そうなんだ!」


まだ髪型を気にしながら、指に毛先を巻き付けて作り笑いをした。


もう……

大好きな人との時間が終わってしまう

でも――

もう一度だけ……

笑顔がみたいな…。

悪いことかな…?

意を決してもう一度だけ彼を振り返ると

「?……そうだ!
用事すんだら、図書室に来てよ!
せっかく会ったんだし、もう少し話したいしさ。」


愛しすぎる笑顔を

あたしのために

向けてくれた…。


そんな顔しないで……。
そんな目で見られたら、あたしは嘘がつけなくなる……。



「…じゃあ、後でね!」

彼に吸い込まれて、動けなくなったあたしに……
返事を聞くことなく彼は、走って校門の奥へと消えていった


えぇ!

あたし…

今日の内に……

また会えるの?

また直ぐに……

蓮君に会える―――



アユミ……

こんな風に思ってしまうのは…

罪なんだろうか―――

でも――

やっぱり嬉しくてたまらないよ!

期待しちゃダメだって

わかってるけど……

どうしても…

このときめきだけは心から消えてくれない。

あたしは、蓮君に捕らえられた……

哀れな蝶だった……。






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