桜風 〜春の雪〜

先生からの、たっぷりすぎるほどのお説教を……あたしはどこにも視点を合わせないで聞いている。


だって、心の中は

もうすぐ蓮君に会える

って……

それだけなんだもん。


あの日…

アユミから付き合い始めたって報告を受けるまでは

あたし達はたまにメールをする仲だった。

彼から専用のメール着信音が鳴ると

あたしの心も……

ドキドキ鳴るんだ。

そんな片思いが半年くらい続いた頃

あたしは
久しぶりにアユミに誘われたサンセットで……


辛い現実を突きつけられた。


帰り道は行き交う人に指さされながらも……


泣き続けてしまったのを今でもよく覚えてる……


メールの音が鳴って

恐る恐る画面を開いた時の

苦しさ…


それまで、ただ会えるだけで幸せで

メールが来たらもっと幸せで…

片思いだけど……

毎日が蓮君の与えてくれる


鮮やかな刺激と、小さな幸せで輝いてた。

思えば……

あたしは、あの時初めてホントの恋の意味を知ったのかもしれない――…。


あの時――

返信できなかった――

伝えられなかった…

蓮君への思いは…――




今でも、携帯の中に……


閉じ込められたままだよ…。





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