桜風 〜春の雪〜
別に居眠りするわけでもなく、

ただボーッと建物の間から見える

快晴の空を、どのくらい眺めただろう。



青空に映えるピンク色の花びら達は

とても…美しく

そして…どこか寂しげに
微笑んでいるように見える……。


相変わらず、
中からは暇を持て余して
お喋りをする女子のひそひそ声と、

それを注意する体育教師の声が

ただの雑音としてあたしの耳に聞こえていた。



時折優しく吹く風に乗って

あたしの鼻へと運ばれる春の匂い


風の行方を目で追ってみると……

校舎の何階だろう…

開け放した窓から、体育館を見つめる1人の男子が見えた…。




…こっち見てる……?


強い風が吹いてきて、あたしは髪をなびかせながら
砂埃に目をつぶった―――――



あ………。


無数の花びらが、一斉に風に乗って

あたしの頭に降り注ぐ……。

花びらのカーテン越しに
あたしは…もう一度視線を戻した。


いなくなってる……………。

幽霊でも見てたりして…
罰でもあたっちゃったかな………


ハハハ――――

あたしは首を傾げながら、鼻で笑い飛ばすと再び……

ただぼんやりと、小さくひびの入った

薄汚れた壁をじーっと眺めた。



大好きな場所だけど、美しく咲き誇る花を見るには、

あたしの心は酷く淀んでいて


あたしは、本能的に……

それから目をそらしていた。




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