桜風 〜春の雪〜
‡ 裏切り者 ‡

………

…………

「皆さん、お疲れ様でした。間もなく目的地に到着いたしまーす!―――…。」


「え…もう着いたの…!?」


我に返って、窓の外の景色の変化に見入るあたし


クスクス
アユミは隣で笑っている
「まったく!
折角バスの中は恋バナで盛り上がろうと思ってたのに〜!!」

アユミは残念そうに顔をしかめながら、退屈しのぎにしていた携帯のゲーム画面を切った。


「ごめん、ごめん!
ボーっとしてたら寝ちゃったみたい!」


あたし…

眠ってたのかな…?

本当に…?

なんだか不思議な気分だ。
まるで、あの日に……

トリップしたみたい……。


相変わらず、隣でにこやかにあたしを見つめるアユミに

あたしは、お返しの笑顔を送る

「あたしは恋バナなんか無いもんね〜!!」


「ハイハイ!やっぱ森定は好きになれないって事ね〜。……でもね…恋とは気づいたらそこにある…ものなんですよ?」


アユミは綺麗な笑顔を、いたずらっ子の顔に変えて笑った。


「フフフ!さすが彼氏持ちは言うことが違う!!」

チクリと胸が痛んで、あたしは思わず視線を逸らしてしまう…。


『なに、なに?花梨の恋バナ〜!?』

間に割って入ってきたのは、同じ班になった理恵だった。

『花梨モテるのに〜
てか、彼氏ホントにいないわけ〜!?』

理恵はあたし達とはまた違ったタイプの、ギャル風の女の子なんだ。

見た目は派手だけど、中身は以外としっかりしていて優しい子。

美人系のアユミに

ギャル系の理恵

(自分で言うのもなんだけど…)
カワイイ系のあたし…


最近では、3人の中で誰がタイプ?

なんて、男子達の噂の的にされてる


ほら…

前の方の男子も

肩をつつきあいながら、チラチラとあたし達3人を見てる…


蘇ったあの日の罪悪感から逃げるように、あたしは彼らの声に耳をこらしていた…。





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