桜風 〜春の雪〜
ドキン―…

まただ

小さく胸が鳴って…

波紋のように、温かさが広がっていく……

何かを知らせるように、胸を覆い尽くす

温かくて、どこか懐かしいような感覚


「花梨〜!!お願いしますぅ〜!!」

理恵の甘い声に絆されて、あたしはしぶしぶキューピットを引き受けることにした。




決行は今夜。

作戦は、大胆にも今夜…彼らの部屋に、お邪魔しよう!

ってこと。


理恵情報によると、彼ら3人組は

かなり昔からの幼なじみで…

いつも一緒にいるらしい。


そう言われてみれば…

2人に向ける春雪の笑顔にはこころなしか柔らかさを感じる。


あたしのお気に入りの笑顔だ……

これって、なんか好きみたいじゃない!

違うから!

あたしは左右に頭を数回振って

今の言葉を中から消し去った。



自由行動の時間中あたし達の話は、作戦会議で終わってしまった。


理恵…
恋してるな…


なんて、当たり前の感想と、ほろ苦い喫茶店の珈琲の思い出を残して……


自分の思いさえ、コントロール出来ていないあたしが、キューピット役なんて……

なんだか、腑に落ちない気がしたけど……

一つの恋の行く末を見つめることによって……


あたしは、この無意味な感情から、逃げ出せる気がしていた……




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