桜風 〜春の雪〜
「理恵…せっかくなんだから…
高橋君とアド交換しちゃいなよ…――」
―――
『…う、うん…。』
隣でもじもじしてる理恵を、あたし達は温かい目で見守ってる。
打ち寄せては引いていく波の様に……
理恵は体を前後に時々揺らしながら
チャンスを待ってるんだけど……
この部屋に来て1時間あまりが経とうとしているのに
未だに興奮気味の彼らのテンションは、上がる一方で……
目当ての彼に近づけない様子。
「仕方ないっか〜…。」
アユミは隣に座るあたしにだけわかるように目配せすると――
「アユミ、なんか喉かわいちゃったぁ〜。
航くん自販機付き合わない??」
あまーい声で一人を外へと連れ出すことに成功した。
さ、流石アユミ!
アユミは後に続けと言わんばかりに、去り際にドキッとするような視線をおくってきた……
……
……
よし!!あたしもやらなきゃだよね…
こういうの苦手だけど…
理恵の恋のため!
アユミに続いて
「あ…あたしも……喉かわいちゃったな〜。
……
って……
まだ連れ出すべき人は2人いるし……!
どーしよー!!
やっぱ、ここは春雪を連れ出して…
そしたら一馬くん残っちゃうし……
一馬くんは高橋君狙いだって事知らないわけだから……
あーもう意味が分かんない!
またもや、あたしは…
大事なところで固まってしまった。
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