桜風 〜春の雪〜

「あれ……花梨ちゃん…?」


しばらくの間、月を見つめてるうちに

ココロココニアラズ…になっていたあたしは

突然の呼びかけに思わず体を震わせた…。


「………!」

次第に近づいてくる足音…

久しぶりに……

あたしの耳に届いてくる……

人の作り出す生暖かい空気……。


それだけじゃない…

あたしには、それが誰なのか…

見なくてもわかるから…。



「…蓮君…なんで…?」

「やっぱり花梨ちゃんだ。久しぶりだね〜♪」



彼は次第に、影を大きく振るわせながら

あたしの元へやってくる…。


やっと、月明かりに照らされて露わになった…

蓮君の笑顔はいつもと同じだ…


あたしの胸をキュンと締め付ける、綺麗な笑顔……


気がつくと…

あれだけ待ちわびていた風は、蓮君に目を奪われている隙に雲を取り払ってしまったようで……


さっきよりも力を増した銀色の月明かりが………

あたし達を

照らし出していた……





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