桜風 〜春の雪〜
再び、蓮君に促されて、さっきまでいたソファーに座る…。


同じ…ソファーなのに…
同じ…

場所なのに…

何故だろう…?

先程までとは全く違う空気と……

ソファーの感触……。


「久しぶりだね?花梨ちゃん…相変わらずメールしても返事くれないしさ…?」


そう……

アユミに付き合う事になったって聞いて以来………

あたしは……

あんなに楽しかった蓮君とのメールを

封印していた…。


「…アユミの彼氏にメールするなんて…出来ないよ……。」


あたしは無理矢理作った笑顔を向けた。


「フウーン…。
その割に、あの時は…ねぇ…?」


ドキンドキン

一斉に働きをましていく心臓に

カーッと熱い固まりが流れ込む

自分の中の血が沸騰して……

あたしの体を支配する………。


「あ…あれは…!……とにかく…忘れて!」


上手く話せないよ、早く逃げ出してしまいたい!!

蓮君はそんなあたしを

鼻で笑いながら……

徐々に感覚を詰めながら
あたしに小さな攻撃を仕掛けてくる…

少しずつ

心に浅い傷を付けて……


あたしが傷つくのを待ってるみたいに……



「俺のこと好きなんでしょ?」

「……!?」


彼の大きな手があたしの動きを封じて

唇が…

首筋へと寄せられた……


「!!…やっ…!!」

あたしは渾身の力で抗った



何が起きてるの…?

イヤ…!

誰か…助けて!!


声を出してしまったら…
知られてしまう…

あたしは、必死で彼の手を押しのけながら

聞こえるはずのない助けを…呼んでいた。



ある人の

出現によって……


この体が離れるまで…




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