桜風 〜春の雪〜
アユミが行ってしまった…


いつでも思い出せるくらい、ずっと一緒にいて…

誰よりも信頼していたアユミ……


その信頼を裏切ったのは、他でもなく……


このアタシだ…。



瞳から零れ落ちる涙は、後悔の印…

アユミを裏切ってしまったことを、今の今まで隠し続けてきたあたしに、ついに罰が当たったんだ…。


涙を流す資格なんて、あたしには無いのに…。


今は、歪んだ瞳の奥にも、シンシンと気味の悪い耳鳴りの響く頭の中にも……


もう、アユミの笑顔や笑い声は思い出すことが出来ずに……


あたしは、空っぽになったただの入れ物みたい……。



呆然と見上げる月夜も、不慣れなこの空間も……

心に届くことはなく、このまま消えてしまっても

誰一人、あたしの存在に気づかないような気がした…。




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