桜風 〜春の雪〜
‡包み込むように…‡

………

…………

"大丈夫……。"

"だぁれ…?"

"俺が守るから…。"


ゆっくりと…

風が髪を揺らすように…
あたしの心臓と…

おんなじ速さで響く鼓動………。


まるで…

優しく

優しく…

包み込むように…

あたしの弱った心を

癒してくれる呪文……



そうか…

あたし…夢見てるんだ…
雲の上にいるみたい

フワフワしてとっても気持ちがいい…

夢を見ているから…?

それとも…

あたし…

この世界から消えてしまったのかもしれない…



それでも…

いいや…

こんな気持ちのいいところなら…

あたしは一生

この世界で生きてゆきたい……。


微かに香る…名前も知らない花の香りが

あたしの鼻をくすぐった……


生きている証を優しくあたしに届けてくれる…。

だめだよね…。

だって、あたしは気づいてる…

一片の花びらが優しく舞うように

優しく…優しく

頬にふれる

君の手…

あの日とおんなじ

勇気をくれる

君の笑顔がそこにはあるはずだから…


あたしは

ゆっくりと

瞼を開けて

直ぐ側にあるオアシスを見つめた…。




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