桜風 〜春の雪〜
あたしは抱えきれないほどの


ありがとう…


を込めて…



とっておきの

笑顔を彼に贈った。




彼は顔を夕焼け色に染めながら


照れたように


頭をポリポリとかく。



こんな光景さえも……



愛しくて

愛しくて……


思わず…ギュッてしたくなっちゃうよ…



あたしは、自然に湧き出てくる

無添加の微笑みを浮かべながら



……好き…………


あなたが…


…好きです。




心の声で…

思いを伝えた。


裏切り者のあたしが、大切な親友を傷つけてしまったこの日……


泣くことさえも、許されない重い罪の中で、芽生えたあたしの気持ち…。

それだけが、白濁した世界で唯一、眩い光を放っていた…。




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