桜風 〜春の雪〜

春雪は、しばらくの間黙り込んでしまったあたしを

心配そうに覗き込んだ………。


ドキン


ぶつかり合った視線が

幸せの鼓動を鳴らす…


こんな時に、幸せを感じてしまうことが、少し後ろめたくて……

すぐに、あたしは視線を逸らした…。



「バーカ!心配すんなって!親友はこんな事じゃ壊れねーよ。」



ばか…

違うよ。

ちょっとだけ……

幸せに浸っちゃっただけだよ。


あたしは…

数センチ先にある

彼の手に

自分の手を触れさせた。


少し戸惑った様子だったけど………


その手で

優しく包み込むように……


春雪はあたしにエネルギーを送ってくれる。



行ってくるね。

待っててね。



あたしは

一人……部屋へと戻る…

アユミがいる部屋


どんな事になったとしても…

負けない

強い思いと……

温かい風に守られてる


だから…

怖くないんだよ。



「待っててやるよ……。」


背中から聞こえた愛しい声が……


あたしの中に溢れて、心を満たしてゆく……


春雪は……

あたしの足りない一部みたいに……



ピッタリと心に寄り添って……


あたしを包み込んでくれた……。





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