桜風 〜春の雪〜
カタン――
「アユミ………ちょっといいかな…?」
部屋に戻ったあたしは、早速…窓際の座椅子に座る彼女に呼びかけた。
「………――。」
アユミは…気づいてるのに―――
こっちを向こうとはしなかった…
ツキン
凍りついた空気が
鋭い棘となって
次々とあたしめがけて飛んでくる…。
会話を失った
この部屋は
閑散として
とても寂しそう…。
「…アユミ…少しだけ話聞いて?」
気がつくと
理恵は
気を利かせて
部屋を出てくれたようで
あたしは…
返事すら返してくれない
人形と化したアユミに…
ゆっくりと
話し始めた。
蓮君のこと……
そして……あたしの気持ち……。
本当は、理恵の恋バナや、春雪のこと……
たくさんのキラキラしたお喋りで、思い出に残るはずだったこの部屋…。
今は、アユミの心の声さえも聴こえない……
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