桜風 〜春の雪〜
しばらくすると、あたしの視界のずっと奥の方に
あの場所を見つけた。
いつも…
何故か――
あたしを温かく迎えてくれる
……オアシス…………
ハァハァ……
やっと耳に届いた自分の荒い息遣いを
あたしは、膝に手を突いて、ととのえる
ポタ‥。
手の甲に零れ落ちた
一粒の雫……
額は微かに汗ばんではいたけれど―――
涙……
それは、瞳から零れる
水滴の
一部分だということに
気づいた……。
彼は……
そんなあたしに
ゆっくりと
歩み寄って
…………
何も聞かずに
頭をヨシヨシ……って
撫でてくれた。
優しくしちゃだめだよ…。
あたしは、逃げてきたんだ…。
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