桜風 〜春の雪〜

「花梨、お前まだアユミと仲直りしてねえの??」


コンビニの袋をガサガサとあさりながら

近づいてくる高橋君…


あたしに……

というより、彼の瞳には理恵しか移ってない模様だ…



理恵は慌てて彼の口を塞いで軽く頭を叩く。


フフフ!


彼の前では、あんなに照れていた理恵が……


なんて思っていたら、思わずこみ上げた笑いに

あたしは、ハッとしてすぐに口をつぐんだけど…

一馬と航は、ほっとしたように苦笑いを浮かべた。



あの日から――

変わったこと……


まずは……

理恵と高橋君が付き合うことになった。



受験シーズンなだけに、甘いデートはお預けだけど……

二人なりに未来に向かって、進んでいるようだ。


それと……

あれ以来

あたし達はクラスで仲良しのグループになった。


ただ一つ……

アユミと…あたしの関係を除いて…。



「あ〜!俺も彼女欲しいなー!」


口いっぱいにパンを頬張りながら言ったのは航だった…。


航はチラチラと

アユミに熱い視線を送ってる……


前に内緒で聞いた人気投票の結果……


アユミに一票を投じた中には航がいた…

というのは聞くまでもない。


航はアユミに片思い中のようで

残念ながら、その思いは未だにアユミには届いていない様子だ。



アユミは蓮君と付き合っていることを、学校では隠していたから…

あれ以来、アユミと蓮君がどうなったのかも、あたしにはわからなかった…。


でも……

いつか、航の綺麗で、確かな気持ちが、アユミに届いて……


アユミが、幸せを感じてくれたら……

そう、密かに思っていた…。




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