桜風 〜春の雪〜
「おまえ等なあ!!俺なんてそんな暇ねーし!」


次に声を上げたのは

一馬だった。


高校に入学して以来、部活三昧の生活を送っていたお陰で……


彼の成績は、下から数えた方が早いらしく……


昨日から、何時になく勉学に励んでいる。



「ねぇ…一馬…春雪はまだ学校来れないの?」


高橋君のつんつんした髪を触りながら、理恵が言った……。



そう…春雪は……

この一週間

風邪をこじらせたらしく

休んでるんだ……。

メールをしても

"見舞いは来なくていいから"

って一度返ってきたきりだ……。


一馬は理恵の問いかけに一瞬……

困惑した表情を見せた…――。


え…

何か…変なこと……??


「明日には来るって言ってたよ。」


一馬は理恵を通り越して
あたしにそう告げると……


食べかけのおにぎりを口いっぱいに含んで

参考書片手に教室をあとにした。


なんだろう…?

次第に強くなる胸騒ぎを感じながら……

あたしは…

アユミに目を向けた……
けど――……

やっぱり…アユミからの応答は

なかった。






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