桜風 〜春の雪〜

「おっはよ〜!」

耳元で放たれた一馬の声が


あたしの中で鳴り響く、低い…春雪の声をかき消した……。


次第に――――

現実へと戻されてゆく

このカラダの感覚……


ぽっかりと穴のあいた


虚しい


世界…―――



心配そうにあたしをのぞき込む一馬顔が…

なぜか

春雪と重なって……

涙でゆがむ………。




「なんで…?なんで…」


恋って……

意味不明なことの連続だ……。


初めて見た

君の笑顔も…

握った手も…

あの日の言葉の続きも…

そして………

アノ言葉の意味も……


あたしには理解の出来ない事ばかり…


何時でも…近くにあると信じてた―――


――愛しい人の姿は…
……



もう…ここにはない。


それだけが…

あたしに突きつけられた現実なんだ



「なんで………」


再び耳鳴りのように、繰り返される

彼の冷えた声に

あたしは何度となく問いかけた……。



答えなんて…

返ってくるわけ無い。




だって…



君はもうここにはいないから……。






.
< 81 / 204 >

この作品をシェア

pagetop