桜風 〜春の雪〜

「花梨。ちょっと話あんだけど…
帰り残ってもらっても……いい?」


昼休み―――

降り続く雨に、げんなりと空を見上げるあたしに
声をかけたのは…

一馬だった。


最近は、故意に一馬を避けるようにしていたから……

一馬の顔を見るのは久しぶり…。


整った顔立ちに

優しい目

茶色い短髪は

爽やかなスポーツマンの彼のイメージに相変わらずピッタリだ…。


でも……

一馬…ちょっと痩せたね?


よく見ると……


少し窪んだ瞳は、甘い顔立ちに

うっすらと……影を落としている。



「わかった…。」

って…一言…


これ以上………

一馬を見ていたら………


聞いてしまう。


"なんで…?"

の答えを………

一馬を…これ以上

傷つけたら…


ダメだから。


あたしは…直ぐに一馬から目を反らした。




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