桜風 〜春の雪〜


あたしは裏庭に……

たった独りで佇む

この…1本の

桜の木の方が

大好きだ…。

地にしっかりと根を張って

一際大きく…

優しく…

強く…


この街を見守る……

1本の桜の木。




いつか…

偶然出会った

お婆さんに聞いた…

大切な話を……

なぜだか急に…

思い出した……。



一馬の後を追いながら

あたしは大切な1ページをめくる…



あたしの運命を……

この場所へと導いた

とても切ない物語。





あたしは…

桜の木に勇気をもらって

一馬の方を振り返る


一馬はゆっくりとあたしに歩み寄ると

今にも泣き出しそうな悲しい表情で

全てを話し始めた。



雲の切れ間から、一瞬だけ顔を出した太陽が、細い光を新緑の木に与えていた…。


この、一瞬の光さえも……

強くてたくましい、この木の未来につながる……

数え切れないほどの、辛い日々を堪え忍んできた桜の木が……


あたしを、じっと見ていた…。




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