桜風 〜春の雪〜
「花梨。今から言うことは…本当は……
ずっと俺の胸の中にどどめておくべきなのかもしれない…
……
森定は……
花梨のことが…
……好きなんだよ。
でも……事情があって、花梨を遠ざけてるんだ。」
一馬の表情が更に険しくなる……
「じじょう…??」
あたしは…
いたって冷静を装っていた……。
春雪の思いを聞いて…
嬉しくて…
幸せな気持ち…
でも…その後に
何か落とし穴があることには薄々感づいているんだ…。
だから、一瞬たりとも気を抜かずに、一馬の瞳を食い入るように見つめていた…。
「ごめん!俺…まだ迷ってる…」
苦痛を増す一馬の声が、力尽きたようにかすれて消える…。
「…教えて?…じゃなきゃ……あたし…前に進めない。」
あたしの言葉に
一馬はギリギリまで迷って…
彼なりに、やっと結論を出したようだった…
「アイツは…
もうすぐ………
この世から………いなくなるんだ…。」
え‥‥‥‥
コノヨカライナクナル?
一馬の重みを増した真剣な低い声が……
何度も、頭の中で木霊する……
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