桜風 〜春の雪〜
あたしは…

何度も何度も…

祈るように

手を合わせた。


別に神様に届かなくてもいい……


天使だって…死神だって…悪魔だって……


春雪を…救える人がいるならば……


あたしは誰にだって祈るよ……



そんな…ばかげた妄想から我に返ると…


やっぱり

あたしは…

裏庭で…一馬の隣に立っていた。



もしかしたら…

夢かもしれないって……


甘い期待は空を切って

この場所には

無慈悲な現実と…

絶望的な未来図しかなかった……。




かなりの時間

周りを気にすることなく
泣き続けたあたし達は…

ヒクヒクと喉を鳴らしながら

今にも降り出しそうな雨空を眺めていた。



「一馬……なんで…なんでこんな事になっちゃったの?」



一馬は大きく息を吐くと……



彼の知っている

全てを……

ゆっくりと……

話してくれた。





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