桜風 〜春の雪〜

全てを話し終えた一馬は

深い後悔と…

甦った絶望に肩を落としていた……。




気がつくと

ポツリポツリと降り始めた雨は…

このときを待っていたかのように

地面にまだらな模様を作り出して

あたし達の

涙の跡を消してくれた。



それでも、心に居座る…
辛すぎる事実……。

それと………




あたしの中に宿った小さな光……。


春雪が…あたしにくれた…

最高の優しさ……。



一馬はこれを打ち明けるのを、どれだけ迷っただろう…


きっと、事実を知った日からずっと…


一馬は…この暗闇の中にいたんだね……



あたしが泣くことは

春雪を苦しめてしまう…

あたしが泣くことは

一馬の後悔を広げてしまう…




お願い……

誰か………

あたしに力をください……。



大切な人を

守る力を―――――



あたしはそこに立って

ずっと…あたし達を見守り続けていた

桜の木を見上げた…






…思い出す……

この木に…宿された


強い………命を……





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