【完】お隣さんは同級生〜一人暮らしの2人〜㊤

「…今は榎並を忘れなくても…いい。彩音には笑っていて欲しいんだ」


朝井さんの視線から目が逸らせない。


真剣な眼差し。




「朝井さん…私…」


言わなくちゃ。
朝井さんに。
逃げてばかりの私は弱いけれど、翼に教えてもらった。
向き合う事の大切さを。



「…やっぱり柾樹が好きなんです!!忘れたくても忘れられないんです。…忘れる事なんてできないんです。そんな中途半端なまま、朝井さんとは付き合えない、です…」


朝井さんの目を見たまま言いきる。
勢いがあったのは前半だけで、最後は尻すぼみに小さくなっていたけれど。


握られた手から伝わる安心感は朝井さんを好きだからじゃ、ない。
好きだけど、きっと好きの意味が違う。


胸が高鳴るのも、些細な事でドキマギするのも、こんなに苦しいのも……


柾樹だけ。



「…………」


朝井さんは私の目を見たまま表情を少し緩めた。


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