【完】お隣さんは同級生〜一人暮らしの2人〜㊤
親睦合宿
単純と器用と不器用
自分気持に気付いてから2週間。
別段何をするわけでもなく私は至って普通の毎日を過ごしていた。
朝、化粧をして制服を着て朝ご飯の準備をしていたらインターフォンがなって柾樹が部屋に入って来た。
…変わった事と言うと毎朝柾樹と朝ご飯を食べるようになった事と夜ご飯もたまに一緒に食べるようになった事…かな。
そこに素敵な理由なんてひとつもなくて、とっても簡単。
4人で合宿の買い物をしているときに柾樹が悠士君に「金がない」と言っているのを聞いた美菜が柾樹に一言。
「お金ないんなら、あんたら一緒にご飯食べたら食費浮くんじゃない?」
……そんな簡単でかつ合理的な理由です。
でも私はそれでも、いい。
そんな理由でも一緒にいられたらいいんだ。
「おはよ。今日から合宿だね」
「お前なんかやらかしそう」
合宿を楽しみにしていた私になんとも失礼な言葉を浴びせてきた柾樹。
「そんな事しません。私子供じゃないもん」
いつもなら怒るかもしれない一言にも、大人ぶって一歩引いて言ってあげたら
「ハイハイ、ハイハイ」
逆に子供扱いされた。
くそう…
なんで、こう言い合いみたいになるんだろう?
チッと心で舌打ちしたものの、この状態を打破する勇気はない。
鍵を閉めた事を確認して、重たい合宿のバッグを持ってマンションを後にした。
「おーもーいっ!」
「たった3日の合宿なのに何がそんなに入ってんだよ?」
私が一生懸命抱えてる合宿カバンを見ながら柾樹が心底呆れた声色で言う。
そんな柾樹のカバンは至ってシンプルでパンパンの私のカバンに比べたら空気しか入ってないんじゃない?ってくらいスカスカだ。
「別に何も入ってないもん…」
ハシャいで大量の着替えとお菓子とカードゲームを詰め込みましたなんて馬鹿にされるだけだから言わない。
「…ほらよ」
のろのろ歩く私に業を煮やしたのか柾樹は私のカバンを引ったくって自分のカバンを私に渡してきた。
…やっぱり柾樹のカバンは空気が大量に入っているらしく、私のカバンの半分の重さもないくらいだった。
「あ…ありがと」
何だかんだで優しい柾樹にお礼を言って学校に向かった。