【完】お隣さんは同級生〜一人暮らしの2人〜㊤
「散策って何すんの!?」
笑いながら悠士が問い掛ける。
「何しよっか〜?」
美菜も笑いながら言った。
その2人の笑みは爽やかなものではなくて明らかに企み顔だった。
「私海の方に行ってみたい!」
そんな2人に気付くはずもない彩音がそう言ったから俺達は海の方に行く事になった。
そこは今まで見た事ないくらい綺麗な海が広がっていて。
俺達が住む町にはないような透けた青い水に少し傾いた太陽の光。
微かに香る潮の香り。
「キレーイ!」
彩音は美菜ときゃぁきゃぁ言いながらはしゃいでいる。
…女って海とか夜景とか好きだよな。
「あっ!俺喉が渇いてたんだった」
ポンっと手のひらを叩いて悠士は思い出したように言いだした。
なんだそのわざとらしい小芝居は。
「じゃあ私が一緒に買いに行ってあげよう。あんたら何飲む!?」
美菜が俺と彩音に聞いてきた。
「えっ…悪いから私達も一緒に買いに行くよ」
彩音がそう言うと美菜が彩音に近づいて何かを言った。
何を話してるのかは俺には聞こえないからわからないが
「―…じゃあ私ウーロン茶で…」
そう言った彩音は何故か少し頬を赤らめて恥ずかしそうだった。
「わかったわ。柾樹君は?」
「コーヒー」
「ウーロンとコーヒーね♪じゃぁ悠士行くわよ」
美菜は少し強引に悠士を連れて自販機に向かった。
なんかご主人様と犬のようだ。そんな2人を見送った俺たちは
「………。」
「………。」
お互いに沈黙が続いた。
遠くでは他の生徒がはしゃぐ声が聞こえる。
「きょ…今日ね夜ご飯、シチュー作るんだって」
先に沈黙を破ったのは彩音。
「普通カレーじゃねーか?」
「…ん。まぁそうかもだけど、みんなでご飯作るってちょっと楽しくない?」
「そうだな。」
笑いながら話す彩音を見て、団体行動とかが苦手なタイプの俺もそんな彩音と作るのは悪くないのかもな…
なんて思った。