【完】お隣さんは同級生〜一人暮らしの2人〜㊤
「余計なお世話よね?」
美菜はおぼつかない手つきでじゃがいもの皮をむきながら言ったけれど
「…美菜料理した事ないの?」
有り得ないくらいの手つきで見てるこっちがヒヤヒヤする美菜の手元。
聞くまでもなかった。
明らかに生まれて初めて包丁持ちますって感じ。
「料理なんてできなくても結婚したら自然にできるようになるものなのよ」
美菜は包丁を私に向けて言った。
どんな理屈だよ!
「ちょっとあぶな…」
私は玉葱をスライスしながら言った。
「流石は一人暮らし。馴れた手つきね」
美菜は感心しながら更にジャガイモに手を伸ばしていた。
「すぐに慣れるから美菜も料理したら?」
…これ以上無残なジャガイモを見たくない。
微かな希望を胸に問いかけたけれど
「気が向いたらね〜てかさっきは二人きりでどうだった?」
美菜の気が向く事はないんだろうな、と手つきを見ながらぼんやりと思った。
「ん〜普通だよ?」
玉葱が目にしみるっ!
私は涙目になりながら言った。
「普通って何よ?せっかく2人きりにしてあげたのに〜あんまりのんきに行動してると誰かに柾樹君持って行かれちゃうわよ?柾樹君モテるんだから」
美菜が柾樹と悠士君の方を指さす。
そこにはお米を炊きに行った柾樹と悠士君の所に女の子が数人集まっていた。
…ムカつく…
きゃっきゃとハシャぐ女の子達に少しジェラシーを感じつつも
「…でも…どうしていいかわかんない…」
弱気な発言をする。
消極的な私。
「恋は積極的に行った者の勝ちなのよ。あの中の誰かが柾樹君と付き合ったら彩音はイヤなんでしょ?」
美菜はそう言って包丁を置いて
「ちょっと私柾樹君と変わってきてあげるから今度は頑張んなさいよ〜」
涙目の私を置いて柾樹の元へと歩いて行ってしまった。