【完】お隣さんは同級生〜一人暮らしの2人〜㊤
「美菜が料理は私に向いてないから変われってさ」
あいつどんだけ女王様なんだよと呟いた柾樹は美菜が置いていった包丁を手に持った。
その包丁と一緒に置いてあった過食部がほぼなくなったじゃがいもを見てあいつ女じゃねーなって笑っていた。
柾樹と話していた女の子達がこっちを見て何かを言い合っている。
その瞳は彼に向けていた目とは明らかに違う。
なんか怖いな…と思いながらも
「じゃぁ人参切って」
まだ無傷の人参を柾樹に渡した。
「わかった」
言われた通りに人参の皮をむきだした柾樹に
「…なんか柾樹ってモテるんだね」
美菜から頑張れと言われたので勇気を振り絞って聞いてみたけどなんとも卑屈な言葉になってしまった。
…違う!
こうもっと可愛く拗ねた感じで言うつもりだったのにっ
「…何が?」
柾樹は少し不可解な顔をしながらこちらには視線を向けずに人参の皮を剥き続ける。
「さっき女の子がいっぱいいたじゃん」
あぁ…そんな事が言いたいんじゃないんだよ……。
「ただ火焚くのに男手が欲しかったんじゃん?」
柾樹はそう言って人参を素早く切る。
やっぱり器用な柾樹。
「でもかわいい娘いっぱいいたじゃん…」
自分の不安な気持ちを柾樹にぶつける。
「何いきなり?」
人参を切り終わった柾樹は包丁を置いてこっちを見据える。
柾樹の色素の薄い瞳は私を射抜いて心のどす黒い感情を見抜いてるかのよう…
「……あの娘達の誰かを好きになったりしないでね」
恥ずかしい気持ちでいっぱいになりながらもそう言って私はキャパオーバーになって美菜の所に逃げた。
言い逃げ。