びたーびたーちょこれーと。
長月の音色は、恐ろしいくらい美しかった。
去年の比じゃない。
長月のピアノの音色が作り出す世界に飲み込まれる。
心奪われる。
指の動き、ペダルの踏むタイミング、そしてピアノを見つめる長月の表情。
すべてが私の心に衝撃を与える。
瞬きすら勿体ない。
息を止めて聴きたい。
邪魔な音すべて払って聴きたい。
もはや伴奏の域を超えていた。
「ま、ザッとこんな…って水無月?!」
私はいつのまにか涙を流していた。