雪中恋心
けいくんの誕生日が迫っていた。
そのことに気づかない振りをして、私はある計画を進めていった。
そして前日に、けいくんとの放送を繰り返すごとに増えていったリスナーに、こっそりと声をかけていった。
当日。
いつものように放送を開始した。
『わあ、◯◯さんいらっしゃい!』
「ゆっくりしていってねー」
『…あれ、なんか今日リスナーさん多いね?』
「ホントだ、なんでだろう?」
時間が迫ると、最近は遊びに来ていなかったリスナーさんまでが、この放送に遊びに来てくれていた。
『…あははっ、それいいですね!』
「うん、ほんと!
……あっ、りゅうくん、ちょっとまって!」
『え?何ですか?』
12時。
日付が変わると同時に、BGMを変えた。
バースデーソングだ。
「行きますよ、リスナーの皆さん!
せーっの!
りゅうくん、誕生日おめでとーう!!」
画面を流れていく、たくさんの「誕生日おめでとう!」の文字。
リスナーさんが、一斉に書きこんでくれているのだ。
『えっ、…えっ?ええ!?何!?なんですか!』
「いやー、おめでとうございますー!
実は、事前に声をかけてリスナーの皆さんに集まってもらったんですよ。」
『な、なにそれ!そんな、そんな…なんですかっ』
「数名の方にお願いしてイラストも描いてもらいました!
みなさんありがとうございます!」
と、事前に回収していた画像データを放送内で公開。
「それからそれから!他の方にも色紙を描いていただきましたっ」
そして、彼が仕事に行ってる間の自分の放送中に、リスナーと一緒に描いた寄せ書きも公開した。
『今日は本当にありがとうございました!!』
けいくんの挨拶を最後に、放送が終了した。
『…もう、びっくりした』
「あはは、みんな二つ返事で参加してくれたよ。」
『ちょっと泣きそうになっただろ!』
「泣いちゃえば?」
『泣かねぇよ!』
ひとしきり笑った後、沈黙。
「…これからも、私の相方でいてくださいね。りゅうくん。」
『…こちらこそ、あいこさん。』