雪中恋心

「私ね、あいこって名前だけど、本名とそんなに変わらないんだよ。」

『そうなの?』

「うん。みやぞのあいか、っていうんだ。
お宮の「宮」に、保育園の「園」で宮園、
藍色の「藍」に、華やかの「華」で、藍華。
宮園藍華。」

『へえ!』

「…だから、あいって呼ばれると本名呼んでもらってるみたいで嬉しいなっ」

『あ…う、うう…なんだよそれ…』

「あははっ」

『もう…』


なんて、ちょっとからかってみる。
相変わらず可愛い反応だ。


「りゅうくんは?」

『僕?』

「名前聞いてもいい?」

『あ…、うーん……』

「あ、もちろん嫌ならいいよ?」

『……。』





やっぱりダメか。






しかし暫く沈黙があった後、チャットの着信音。







そこには、“佐藤圭佑”と書かれていた。







「……あれ?」

『さ…さとう…けいすけ。…平凡な名前でしょ?』


そう言った後に、恥ずかしそうに笑った。


これは、予想外。

彼は誤魔化しが上手で、いつもなにか誤魔化されることが多かった。



だから今回も教えてもらえないと思っていたのに。





ただ、嬉しくて。



「…ううん、すごくいい名前だね」


からかうことを忘れて答えていた。





さとう、けいすけ。


佐藤、圭佑。



うん、いい名前。

< 7 / 12 >

この作品をシェア

pagetop