遠ざかる風景。
 やっとのことで身を起こし、しかし僕は溜息一つで再びうずくまった。
「姉は、事故後も一日半ほど朦朧としていました。その間に私にこれを…、」
 少女は定期入から僕の写真を取り出した。僕はうつむいたままそれを受け取った。
 僕の姿は微妙に中心から外れ、手振れもひどかったが、明らかに僕だった。
「病室のベッドの上で、この写真を私に渡して、小さく、うれしかった、って…。会いたい、って…。それ以来、時折、私は瞬間的に記憶がなくなって、その間、姉のような口調、行動をとるようになったんです…。」
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