君がいたから

お金を払うレジも、靴を置く下駄箱も、何もない。

「ま、いっか……」

こんなありえない状況。

いつもなら絶対警戒するのに、今の私にはそこまで考える力は残っていなかった。

お風呂のこととか料金の払い方とか店員がいないとか、知りたいことはたくさんあるけど、それは後で考えよう。

今はとにかく眠りたい。


荷物を全部その場に降ろし、太陽の匂いが漂うベッドに思いっきり体を沈めた。

すごく気持ちがいい。

なにこのベッド。

やばい。
もう無理。

これで「寝るな」なんて言う店員は無視しよう。

めちゃくちゃな言葉を頭の中に並べつつ、私はそのまま瞳を閉じた……。

< 12 / 37 >

この作品をシェア

pagetop