君がいたから

うーん。やっぱり、こんな少年と出会った覚えは全くないな。

でも、スズメ君が覚えていてくれるのに「私は知りません」なんて言いづらい。


「……スズメ君の家は、私の実家の近くなの?」

私は、大学生の時まで住んでいた実家のことを思い出しながらスズメ君に訊(き)いてみる。

「それは内緒」

と、スズメ君はイタズラっぽい表情でこっちを見ている。


質問を変えてみようか。

「ここは、マッサージ屋か何かでしょ?

どうしてスズメ君がここにいるの?

ここの店員さんだから?」

「ううん。ここは……」

そう言い、スズメ君はうつむいたまま顔をあげようとはしなかった。

この質問もまずかったみたいだな。


「ねえ。じゃあさ、ここは何なの?

マッサージ屋か何かだと思って来たんだけど、店員さんもいないみたいだし。

起きたらスズメ君がいて、ビックリしたんだけど」

「うん……」


シーン……。


静寂がつらい。


スズメ君は、何かを知っていて黙っているのか、知らずにここを使っているのか。

全く会話にならない。

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