君がいたから
「スズメ君、スズメ君!」
いるわけない、
夢を見ていたんだ、
そんな気持ちでは納得できず、
スズメ君がいないかどうか、部屋中全部探した。
クローゼットの中、お風呂場。
そして、台所の戸棚の中も……。
「ベランダ!?」
ベランダに出ても、いない。
窓を開けた瞬間に、このアパートのベランダの手すりに止まっていた小さな雀(すずめ)の群れが、朝霧のたちこめる湿った空に飛び去っていった。
「夢、だったのかな?」
たしかに昨日、癒し屋なる建物を見つけて、その中で一度眠ったよね。
そしたらスズメ君が隣で寝ていて……。
私の話、ずっと聞いてくれてた。
緑の布に包(くる)まれた、謎の少年……。
これからも、また会えるのかもって期待してたのにな……。
寂しさと不思議な気分を拭えないまま、
仕事に行くため、顔を洗いに洗面台に向かった。