君がいたから
小学3年生の頃、私は羽にケガを負っていた雀(すずめ)を助けたことがあった。
その子のケガが癒えるまでの間、
お母さんにもらった新品の緑色のハンカチを適当な大きさに切って、その子の布団代わりにしていたんだ。
初めて触れた雀の体のあたたかさに感動してた。
友達の誘いも断って、学校が終わるなり走って帰宅し、ずっとその子のそばにいた。
野生の鳥だし、いつかは放してあげなきゃいけないと分かってたから、いつでも出ていけるように、私の部屋の窓はずっと開けっ放しにしていたんだけど、
ある日、ケガが治ってこつぜんといなくなってしまったあの時は、すごく泣いたっけ。
ずっと一緒にいられるわけじゃないって分かってたのに、受け入れられなかった別れ。
あれからずいぶん時間が経って、もうすっかり忘れてた……。
あの時、緑色のハンカチの切れはしも一緒に無くなっていたね。
「スズメ君。昨日は、わざわざお礼を言いに来てくれたの?」
そう言いカチューシャを雀の前に差し出すと、
「チュン……」と、悲しげな鳴き声が響いた。