君がいたから
癒し屋の場所をたしかめに行った帰り、
駅のホームで偶然、高校の時の同級生と会った。
「ミノリ? 久しぶりだな!」
「朱雀(すざく)じゃん!
どうしたの? こんなところで」
朱雀は、高校の時ずっと同じクラスだった男子で、よく私に勉強を教えてくれた。
クラスの男子の中でもわりと仲良くしていた人なのに、連絡先を交換するような仲でもなかったから、卒業してからは全く関わりがなかった。
「今度、この近くの会社と商談成立するかもしれないから、そこに挨拶行ってた。
ミノリの会社はこのへんなの?」
「うん、そうだよ。
歩いて10分くらいのとこ」
「そうなんだ。
帰り道、気をつけろよ。
最近日増しに暑くなってるしさ」
「うん。今日も暑いよね」
男の人に帰り道の心配をされたのはかなり久しぶりだったせいか、いい意味で胸がざわつく。
少しだけ大人びた朱雀には、スーツ姿がよく似合っていた。
指先で水色のシャツをつかんでパタパタと胸元に風を送り込んで涼を感じている姿も、バスケ部出身の朱雀らしく爽やか。
「ミノリ、これから時間ある?」
「え?」
朱雀は耳まで真っ赤にして、右手を後頭部に当てている。