君がいたから
会社を出て外の風を仰(あお)いだ瞬間、梅雨の湿った空気の匂いがする。
重たそうな黒雲が空いっぱいに広がっていて、まるで今の私の気持ちそのものだった。
最近あった嫌なことが、津波のように私の体を飲み込んでゆく。
仕事の忙しさが原因で、学生の時から付き合っていた彼氏と別れたこと。
今日、重大なミスをしたと濡れ衣を着せられ、一部の社員達から冷ややかな目で見られたこと。
すごく悔しいし、腹が立つ。
なんで私がこんな思いをしなくちゃいけないんだ。
ただ、頑張っていただけなのに。
今日ほど、人の嫉妬は最も醜(みにく)く、最も厄介な感情だと思った日はない。