好きって言って!(短編)
「そんな不毛な関係、いい加減やめなって」

学食で、隣に座ってた和泉がため息をついた。

和泉チカは私と淳也の関係を知ってる、唯一の友達。

「告白すればいいじゃん。
吉成くんだって、菜々のこと憎からず思ってるよ」

私は首を振る。

淳也が私とこんな関係でいるのは、きっと私に恋愛感情がないと思ってるから。

好きだなんて言って、今の関係が壊れてしまうのが怖かった。

だから、淳也にはこの気持ちを伝えないって決めたんだ。

「でも、我慢するのも限界かも。
淳也ってば、最近やたら上手くなっちゃって」

キスだってとろけそうだし、昨日のエッチだって…。

思い出しただけでボンッと赤く染まる私の顔を見て、

「身も心もメロメロな訳ね」

和泉はまたため息をつく。

「もったいないよー、菜々は美人なのに」

自分ではそう思わないけど。

167cmもある身長も、無駄に長い手足も、ずっとコンプレックスだった。

街角でナンパされたり、スナップ写真を撮られたりしたこともあったけど、いまだに不思議で堪らないもん。

「これからサークルの飲み会があるんだけど、男もいっぱいいるし、菜々もおいでよ。
新しい男見つけて、吉成くんのことなんてスッパリ諦めな」

「困るよー。
私、アルコール苦手だし。
そもそも、サークル入ってないし」

「堅いこと言わないで。
ジュース飲んでりゃいいから、ね」

という訳で、私は和泉に強引に飲み会に連れてかれてしまった。
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