好きって言って!(短編)
「和泉?」

「チカちゃんから、菜々が襲われそうってメールが来て…」

それで淳也がこんなとこにいたって訳か。

和泉の人騒がせには困ったもんだけど。

結果的に、淳也は私を心配して駆け付けてくれるってことが分かったんだから、ちょっと感謝かも。

和泉のニヤリと笑う顔が浮かぶ。

「やっべー。
俺、先輩殴っちゃったよ。
確かチカちゃんのサークルって…」

淳也の顔が徐々に引き攣っていく。

「「…少林寺拳法部」」

二人の声が重なった後、私たちは顔を見合わせて笑ってしまった。

「お前のせいなんだから、ちゃんと説明しとけよな」

ボコボコにされたくねぇからな、なんて半分本気で言いながら、尻餅をついていた私に手を差し延べる。

「…気が抜けたら、腰も抜けちゃったみたい」

私がそう言うと淳也の片眉が下がる。

この、少し困った顔が好き。

「本当、世話が焼けるな」

そう言って淳也は私をひょいと抱き上げた。

淳也の匂いに包まれる。

すごい落ち着くー。

「…どうすんの?
そんな真っ赤な顔で帰ったら、親に怒られるんじゃないの?」

「まだ赤い?」

「ゆでだこみたい」

半分は淳也に抱っこされてるからな気もするけど。

結局、酔いが冷めるまで、淳也の部屋にいさせてもらうことになった。
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